賃貸
Q. 貸主が貸家・貸マンション・貸アパートを売った場合の注意点は?
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アパートを借りていますが、見知らぬ人が「このアパートを元の所有者から買った。今月からは家賃は自分に払って欲しい」と言ってきました。
1 家賃は誰に払えばいいのですか。また、その判断をする際に注意することは何ですか。
2 貸家の所有権が、新所有者に移転した旨の登記がなされていた場合、新所有者から退去を求められると出て行かなければならないのですか。
3 私が、この家から退去する際、敷金は返ってくるのですか。また、誰に敷金の返還を請求すればよいのですか。
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A.
1 家賃の支払先について
1) 借家の売却と貸主の地位の当然移転
① 借家人が借りている建物を、借家人がし、る状態で、所有者である貸主が第三者に売却した場合、買主は貸主の地位も、この売買契約と同時に売主(旧貸主)から承継します。借主の承諾も不要ですし、売主(旧貸主)から借主に通知しなくても、貸主の地位は当然に移転してしまいます。
② 借主にとっては、「この人が家主だから借りた。なぜ自分に断りなく貸主が変更されてしまうのか。」 と不満に思う方もいると思います。
しかし、貸家が売却されても、借主は、自己の借家権を新しい所有者(買主)に対して主張して引き続き住むことができますし、貸主の義務は、借家を借主に使わせることなので、貸主の個性は余り問題にしません。また、敷金・保証金等の返還義務も、新しい所有者に引き継がせる方が、退去時の精算も容易です。さらには、新所有者の方が敷金等を返還する資力のある場合が多いので、通常、借主に不利益はないと考えられます。したがって、貸主の地位は、貸家の売買とともに当然に買主に移るものと考えられています。
③ したがって、貸主の地位が新しい所有者に移転したときは、売主(旧所有者・旧貸主)は、敷金の返還義務も免れることになります。売却後、新所有者が破産したとしても、借主は旧所有者に敷金の返還を求めることができません。
2 退去について
1) 前述のとおり、借家人がいる建物を貸主が第三者に売却した場合、買主は貸主としての地位も、この売買契約と同時に承継します 。
建物の借家人が新所有者に対して、賃借権を対抗するためには、建物の引渡を受けている必要があります。
2) 本件では、借家人が建物の引渡を受けて住んでいる聞に、建物が売却された場合には、借家人は、借家権を新所有者に対抗することができ、新所有者が賃貸人の地位を引き継ぐので、これまでの借家契約がそのまま継続することになります。そのため、借家人は、引き続き、本件建物に住むことができます。
3 敷金について
1) 敷金返還の契約は、借家契約とは別個の契約ですが、借家契約に従たる契約と解されています。前述のとおり、新旧所有者間の本件建物の売買契約により、新所有者が旧所有者から貸主としての地位を承継した場合は、敷金の返還義務も当然に承継するものと解されています。
そのため、借主は、本件建物退去時に、新所有者に対し、敷金の返還詩求を行うこととなります。
データ更新日:2018/03/09